#231 重量単価設定についての問題点と解決方法について

今回の投稿は、目下行っている重量単価設定についての問題点と解決方法についてです。

重量単価とその設定方法について

本ブログの管理人は、地域を対象としたマテリアルフロー分析(Material Flow Analysis; MFA)を行うために、産業連関表という経済統計を使用しています。

産業連関表に記載の金額フローをマテリアルフローに変換する際、生産者価格100万円あたりの重量(以下、「重量単価」)を用いる必要があり、管理人はせっせと産業部門ごとの重量単価の設定を行っておるところでした。

重量単価の設定には主に、品目別国内生産額表を用います。

初期重量単価の設定は,品目別国内生産額表を用 いて行う。品目別国内生産額表は,産業連関表に付帯する資料であり,日本標準産業分類の基本分類の品目について生産額と生産量が記載されている。品目数は,2000 年の品目別国内生産額表においては 約3,300となっている。

橘 隆一, 近藤 浩正, 荒川 正幹, 後藤 尚弘, 船津 公人, 藤江 幸一, 産業連関表を用いた重量単価の最適化モデルの開発と神奈川県のマテリアルフロー分析への応用, 環境科学会誌, 2012, 25 巻, 2 号, p. 134-150より引用(以下、「橘ら(2012)」と記載)

品目別国内生産額表には,各品目の生産量および 生産額が記載されている。したがって,生産額を生産量で割ることによって,各品目の重量単価を推算することが可能である。しかしながら,一部の品目 に関しては,生産量が重量ではなく個数や面積を単位として記載されている。そこで,これらの品目については, Web 上の公開情報や製品カタログなどを参考にいくつかの製品重量を調べ,その平均値を取ることにより重量を設定した,

橘ら(2012)より引用

重量単価の設定が困難に…

管理人も、Web上の公開情報や製品カタログを参考にして設定を試みています。その際に、品目によっては製品が多岐に渡るために、平均値を取る際にどの製品を対象にして、どの製品を除外するのかの線引きに迷うといった困難さを抱えるようになりました。

そういった困難さを解決するためにも、算出方法についての詳細情報が欲しいところです。けれども、橘ら(2012)は、算出(設定)方法の詳細については、以下のようにしか記していません。

詳細な算出方法については,膨大な情報量となるためここでは割愛する。

橘ら(2012)より引用

再現性を担保するために

MFAについてのレビューを行っている醍醐&橋本 (2009)でも、上記の問題についての指摘があります。

研究の蓄積により,MFA の実施方法やフローの描画方法は比較的統一されてきたようにも>見受けられる。ただ,研究によっては,データの出典やデータ構築のための手法論について詳細が記されていないなど,再現性の乏しいものもある。

醍醐 市朗, 橋本 征二, 物質フロー分析の近年の動向と課題, 廃棄物資源循環学会誌, 2009, 20 巻, 5 号, p. 254-263より引用。

そこで、本研究では、重量単価設定における再現性を担保するために、Web 上の公開情報や製品カタログではなく、既存の文献や統計資料、各種報告書に記載されている値を用いて、重量単価を設定できるように努めようと思っています。

次回の投稿では、再現性の担保に資する先行研究についてご紹介できればと考えています。

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