#235 石川ら(2008)の追試験結果を検証

投稿#235では、橘ら(2012)とは異なる手法で重量単価を設定した先行研究の追試験について投稿しました。

今回の投稿は、追試験の検証になります。

追試験を行った論文の情報は、以下のようになります。

石川 明, 加藤 丈佳, 鈴置 保雄, 産業連関表を用いた機械装置重量とCO2排出量の関係の検討:CO2排出量の簡易推計のために, 日本LCA学会誌, 2008, 4 巻, 4 号, p. 349-358

前回の投稿では、石川ら(2008)と同様の手法を用いて、エネルギー機器を中心とした15(列)部門の生産者価格百万円当たりの製品重量を推計しました。

非金属材料の中間投入に占める重量

石川ら(2008)では、推計対象部門における非金属材料の中間投入に占める重量(t/百万円)について算出しています。

電線・ケーブルにおける重量が最も大きく 0.4t/百万円となった。他は 0.2t/ 百万円以下であり、対象部門の製品重量の主要な部分は金属により占められていることがわかる。

石川ら(2008)より引用。

追試験での非金属材料の中間投入に占める重量について、上位から順に5つを並べると以下のようになります。以下の表中の列名MINonMetalが、非金属材料の中間投入に占める重量に該当します。

表235−1 推計対象部門における非金属材料の中間投入に占める重量

石川ら(2008)と異なり、対象部門では、変圧器・変成器が0.4t/百万円近くになりました。それ以外では0.2t/百万円以下となり、石川ら(2008)と同様の結果でした。

計算対象外の非金属材料の金額割合

石川ら(2008)は、対象部門への中間投入における、計算対象外とした非金属材料の金額割合について、以下のように述べています。

計算対象外とした非金属材料(表 4で計算区分が△、※の部門の合計)の金額割合は表 3の右から 4列目に示した。そのうち最大のものは変圧器・変成器で、金額で 2.0% を占める。うち 1.3%が工業用陶器であり、これらは碍子類と推測される。これらが、変圧器・変成器の重量に占める割合は大きくないと推測されるので、本論文ではこの部分に関する重量は計算対象外として扱う。他の部門については、非金属材料で対象外とした金額割合は 1.0%以下であり、本論文では計算対象外として扱う。

石川ら(2008)より引用。

追試験での、計算対象外とした非金属材料の金額割合のうち上位5位を降順にならべると、以下の表のようになります。列名nonmetal_outofobが、計算対象外とした非金属材料の金額割合に該当します。

表235−2 計算対象外とした非金属材料の金額割合

金額割合が2.0%を超えたのが、変圧器・変成器と発電機器・電動機です。

変圧器・変成器については、3.2%のうち、2.2%を工業用陶器でした。石川ら(2008)が上述しているように、これらは碍子類と推測され、変圧器・変成器の重量に占める割合は大きくないと推測できます。

発電機器・電動機については、1.6%のうち、炭素・黒鉛製品が1.3%を占めています。これらは炭素繊維ではないかと推測されます。これらが、発電機器・電動機の重量に占める割合は大きくないと推測されるので、本追試験において、この部分に関する重量は計算対象外として扱うことにします。

他の部門については、非金属材料で対象外とした金額割合は1.0%以下でした。

計算対象外とした精密機械・電子機器等の金額割合

計算対象外とした精密機械や電子機器等の工業製品の金額割合については、表 3 の右から 3 列目に示した。この比率が大きい部門は重電機器や民生用エアコンディショナなどで 10% 近い金額割合を占めている。しかし、その金額割合が 2% を超えるものは、内燃機関電装品、その他の電子部品、集積回路の 4 部門であり、いずれも重量原単位 M(t / 百万円)に大きな影響を与えないと考えられるため、本論文ではこの部分に関する重量は計算対象外として扱う。

石川ら(2008)より引用。

追試験における、計算対象外とした精密機械や電子機器等の工業製品の金額割合について、上位10位を降順に並べると以下の表のようになります。列名nonmetal_outofobが、計算対象外とした非金属材料の金額割合に該当します。

表235−3 計算対象外とした非金属材料の金額割合

対象部門全体について、石川ら(2008)より比率が大きくなっている部門が多くなっています。一方、その金額割合が2%を超えるものは、内燃機関電装品、その他の電子部品、集積回路であるのは、石川ら(2008)と同様でした。

重量原単位の推計精度の検証

石川ら(2008)は、乗用車の重量原単位より、推計精度を検証しています。

乗用車の生産者価格合計を乗用車の生産台数合計で割ると乗用車 1 台の平均価格は 145.6万円になる。これを表 3の M(0.725t/百万円)に掛けることにより、乗用車 1台の重量は平均1,056kgとなる。この値は、文献による代表的な乗用車の重量 1,040kgとほぼ等しくなり、本論文の計算方法により大きな誤差は生じていないと考えられる。

石川ら(2008)より引用。

追試験では、乗用車の重量原単位は、0.730t/百万円でしたので、乗用車1台の重量は、平均1,063kgとなりました。追試験の結果も、大きな誤差は生じていないと考えられます。

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