#233 中間投入に注目した重量単価推計方法

前回の投稿では、重量単価設定における再現性と客観性を担保するために、既存統計を利用する有用性について言及しました。

今回の投稿は、橘ら(2012)とは異なる手法で重量単価を設定した先行研究についてです。

先行研究の紹介

今回ご紹介する先行研究の書誌情報は、以下のようになります。

石川 明, 加藤 丈佳, 鈴置 保雄, 産業連関表を用いた機械装置重量とCO2排出量の関係の検討:CO2排出量の簡易推計のために, 日本LCA学会誌, 2008, 4 巻, 4 号, p. 349-358(以下、「石川ら(2008)」と表記)

石川ら(2008)の論文の構成は、以下のようになります。

まず、製造者価格百万円あたりの機械装置の重量原単位と CO2 排出原単位について、それぞれ産業連関表を用いて算出することとし、検討対象の部門を選定する。CO2 排出原 単位については先行研究によって算出された値を用いることとし、各部門の内訳を考察する。次に、各部門における機械装置の重量原単位について、金属部分だけでなく、非 金属部分も含めて重量につながる中間投入の合計により重量原単位を求める方法を示す。そして、様々な素材・機械 装置に関する CO2 排出原単位と重量原単位との相関図を作成し、経済活動に伴う重量および CO2 排出量への影響の大きさを俯瞰的に把握しつつ、機械装置重量と CO2 排出量との関係を検討する。

石川ら(2008)より引用

上述の引用部分において、「製造者価格百万円あたりの重量原単位」とは、本ブログで推計を試みている、橘ら(2012)でいうところの「重量単価」と同義になります。

けれども、両者は推計の方法と推計対象において、以下のような相違点があります。

重量単価の推計方法における相違点

橘ら(2012)は、製品の重量、つまり、各部門からの産出について(Webでの情報や製品カタログなどの情報を用いて)重量単価の推計を行っています。

一方、石川ら(2008)は、産出ではなく、投入に注目し、各部門への金属及び非金属部分の重量につながる中間投入を合計することにより、重量単価の推計を行っています。

重量単価の推計対象部門における相違点

橘ら(2012)では、産業連関表の統合小分類単位で、約130部門の重量単価を推計しています。

それに対し、石川ら(2008)では、産業連関表の基本分類(列)単位で、エネルギー機器を中心とした機械装置15部門の重量単価を推計しています。

石川ら(2008)の援用の可能性を検討

そこで、本ブログでは、現在行っている、機械器具製造業部門の重量単価の推計において、石川ら(2008)の手法が援用できるかどうかを検討していくことにします。

具体的には、

  1. 石川ら(2008)の追試験を行う。
  2. 石川ら(2008)の手法を、他の機械器具製造業部門の重量単価推計に援用する。
  3. 上記2.で得られた基本分類(列)部門での重量単価を、統合小分類での重量単価に集約する。
  4. 上記3.の集約結果と、橘ら(2012)が算出した2000年産業連関表統合小分類での部門別重量単価初期値を比較する。

という流れで、援用の可能性を評価していきたいと思います。

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