#194 2000年神奈川県マテリアルフロー推計を追試

今回の投稿は、2000年(平成12年)神奈川県の生産活動におけるマテリアルフローの推計の追試についてです。

移輸入、移輸出の推計

移輸入(資源)と移輸出(資源)は,物流表の各項目における移輸入(天然資源)と移輸出(天然資源)の値である。
(中略)
移輸入(製品)と移輸出(製品)は,物量表の各項目における移輸入(製品生産)と移輸出(製品生産) の値である。

橘ら(2012)より引用。

投稿#192で作成した2000年(平成12年)神奈川県物量表において、資源に該当する産業項目ごとに列9412(移入)及び列9411(輸入)の値を積み上げていけば移輸入(天然資源)量が、列9212(移出)及び列9211(輸出)の値を積み上げていけば移輸出(天然資源)量が算出できます。

製品生産の移輸入量および移輸出量も同様にすれば推計できます。

推計に用いたPythonのコードは、以下のようになります。

コード194-1 移輸入、移輸出の算出

# 移輸入量、移輸出量の推計

from decimal import Decimal, ROUND_HALF_UP   #  数値を丸めるためにdecimalモジュールをインポート
# 資源表作成
df_h12_resources = df_h12_reorgo.loc[df_h12_reorgo["term"] == "資源"]
# 製品表作成
df_h12_goods = df_h12_reorgo.loc[df_h12_reorgo["term"] == "製品"]
import_re = 0   # 移輸入(資源)量
export_re = 0   # 移輸出(資源)量
import_go = 0   # 移輸入(製品)量
export_go = 0   # 移輸出(製品)量
import_code = "9420"   # 移輸入の産業コード
export_code = "9220"   # 移輸出の産業コード
for icode in df_h12_per_cap_mt.index:
    if icode in df_h12_resources.index:
        import_re += -(df_h12_per_cap_mt.loc[icode][import_code])
        export_re += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][export_code]
    elif icode in df_h12_goods.index:
        import_go += -(df_h12_per_cap_mt.loc[icode][import_code])
        export_go += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][export_code]

# 小数点第3位で四捨五入する関数を定義
def rounding3(value):
    return Decimal(value).quantize(Decimal('0.01'), rounding=ROUND_HALF_UP)

print("移輸入(資源): " + str(rounding3(import_re)) + "t/人/年")
print("移輸入(製品): " + str(rounding3(import_go)) + "t/人/年")
print("移輸出(資源): " + str(rounding3(export_re)) + "t/人/年")
print("移輸出(製品): " + str(rounding3(export_go)) + "t/人/年")

結果は、以下のようになります。

図194−1 2000年神奈川県の生産活動における移輸入・移輸出の推計結果

先行研究と追試結果の比較

移輸入(資源)

資源の総移輸入量は,最大となった1980年の26 .3t/人 から2000年の14 .2t/人まで,やや大きな増減を繰り返しながら減少する傾向を示した。

橘ら(2012)より引用

先行研究において、論文本文中では14.2t/人となっています。ところが、論文に掲載されている図(図4)では、13.4t/人となっています。

神奈川県の生産活動における2000年のマテリアルフロー

図194-1 神奈川県の生産活動における2000年のマテリアルフロー(単位:t/ 人 / 年)
[橘ら(2012)の図4より一部引用]

一方、追試での推計結果は、13.8t/人でした。

移輸出(資源)

資源の総移輸出量は,1980 年の5 .11t/人 から1985年の4 .89t/人,1990 年の4.45t/人,1995 年の3 .74t/人と徐々に減少したが,2000年に4.77t/人 と,1985 ~1990年の値近くまで上昇した。

橘ら(2012)より引用

先行研究の値4.77t/人に対して、推計結果は4.76t/人となりました。

移輸入(製品)、移輸出(製品)

橘ら(2012)の論文本文中には値が記載されていませんが、図中の値は、移輸入(製品)が9.86t/年、移輸出(製品)が6.25t/年でした。先行研究の値と比べると、移輸入(製品)では、先行研究に近い値を得ることができました。

また、移輸出(製品)では、先行研究の値と推計結果の値が一致しました。

一般消費

一般消費とは,それ以上の加工をされずに,最終商品とし て家庭や政府,企業に売られる製品とする。
(中略)
蓄積,在庫純増,固定資本,一般消費は,それぞれ物量表の各項目における蓄積,在庫純 増,固定資本形成,家計消費・民間消費・政府支出への産出量の値である。

橘ら(2012)より引用

一般消費の値を算出するPythonのコードは、以下のようになります。

コード194-2 一般消費の算出

# 一般消費量の推計

consum = 0   # 一般消費量
pop = 8489974   # H12神奈川県人口
consum_tuple = ("9110", "9121", "9122", "9130", "9132",)   # 一般消費に該当する最終需要部門コード
for icode in df_h12_mt.index:
    for cons_code in consum_tuple:
        consum += df_h12_mt.loc[icode][cons_code]

print("一般消費:" + str(rounding3(consum / pop)) + "t/人/年")

追試の結果は2.39t/人となり、先行研究の値と等しくなりました。

第3次産業

サービス(第三次)産業への産出とは, 第一次,二次産業からサービス産業へ投入される製品とする。
(中略)
また,サービス産業への産出は,各項目から内生部門のサービス産業への産出量の値である。

橘ら(2012)より引用

第三次産業を推計するPythonのコードは、以下のようになります。

コード194−3 第三次産業の算出

# 第三次(サービス)産業の推計

# 大分類区分表の読み込み
df_h12_onedigit = pd.read_csv("h12onedigit.csv")
df_h12_onedigit['code'] = df_h12_onedigit['code'].astype('str')
for i in range(len(df_h12_onedigit)):
    if len(df_h12_onedigit.iat[i, 0]) == 3:
        df_h12_onedigit.iat[i, 0] = '0' + str(df_h12_onedigit.iat[i, 0])
# 行コードをインデックスに指定
df_h12_onedigit = df_h12_onedigit.set_index('code')
# 第三次産業表作成
df_h12_third = df_h12_onedigit.loc[df_h12_onedigit["classification"] == "第三次産業"]
service = 0   # 第三次(サービス)産業量
pop = 8489974   # H12神奈川県人口

for icode in df_h12_mt.index:
    for tcode in df_h12_third.index:
        service += df_h12_mt.loc[icode][tcode]

print("第三次産業:" + str(rounding3(service / pop)) + "t/人/年")

追試の結果は3.67t/人となり、先行研究の値と等しくなりました。

在庫純増、固定資本

固定資本形成とは,耐用年数が1年以上で単価が10万円 以上のいわゆる資本財とする。ただし,例外として, 機械に組み込まれて新たな機械を構成するもの(機 械組込),建設部門がその建設活動の中間材として 購入したもの(建設迂回),土木工事の工事費の内訳として扱われる財(土木迂回),鋼船に組み込ま れた機械(造船迂回)や自衛隊が購入した武器なども含まれる。
(中略)
在庫純増とは,対象年次に生産された製 品のうち,どの部門にも販売されず,かつ,自家消 費もされなかった製品とする。また,購入されたのに使用されなかった製品や原料,半製品および仕掛け品の状態で余ってしまっている製品も含む。

橘ら(2012)より引用

在庫純増および固定資本を推計するPythonのコードは、以下のようになります。

コード194-4 在庫純増、固定資本の推計

# 在庫純増、固定資本の推計

stock = 0   # 在庫純増
fixcap = 0   # 固定資本
pop = 8489974   # H12神奈川県人口
stockcode = "9150"   # 在庫純増のコード
fixcap_tuple = ("9141", "9142",)   # 固定資本に該当する最終需要部門コード
for icode in df_h12_mt.index:
    stock += df_h12_mt.loc[icode][stockcode]
    for fcode in fixcap_tuple:
        fixcap += df_h12_mt.loc[icode][fcode]

print("在庫純増:" + str(rounding3(stock / pop)) + "t/人/年")
print("固定資本:" + str(rounding3(fixcap / pop)) + "t/人/年")

追試の結果は、在庫純増:-0.05t/人、固定資本:2.28t/人となり、共に先行研究の値と等しくなりました。

燃料投入、県内生産(資源)の推計

石油製品,石炭製品から石油基礎化学製品への投入以外については,製品の材料としては使用されず,燃料として消費されると仮定し,廃棄物の計算から除外した。
(中略)
県内生産(資源)とは,県内で採掘された天然資源とする。

橘ら(2012)より引用。

燃料投入、県内生産(資源)を推計するPythonのコードは、以下のようになります。

コード194-5 燃料投入、県内生産(資源)の推計

# 燃料投入量の推計
fuel = 0   # 燃料投入量
dome_re = 0   # 県内生産(資源)
fuel_tuple = ("2111", "2121",)   # 石油製品、石炭製品のコードをタプルに格納
for icode in fuel_tuple:
    for jcode in df_h12_reorgo.index:
        if jcode == "2031":   # 石油製品、石炭製品から石油化学基礎製品への投入の場合
            dome_re += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][jcode]   # 製品の材料としてサムアップ
        else:
            fuel += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][jcode]

# 県内生産(資源)の推計
pro_code = "9700"   # 県内生産額の産業コード
for icode in df_h12_resources.index:
    if icode in fuel_tuple:
        continue
    else:
        dome_re += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][pro_code]

県内生産(資源)の推計結果は、1.09t/人となり、先行研究の値1.69t/人に近くなりました。

第一次、第二次産業の推計

第一次,二次産業への産出とは,第一 次,二次産業から他の第一次,二次産業へ投入され る製品とする。
(中略)
第一次,第二次産業への産出は,各項目 から内生部門の第一次・二次産業への生産量とした。

橘ら(2012)より引用。

第一次、第二次産業を推計するPythonのコードは、以下のようになります。

コード194-6 第一次、第二次産業の推計

# 第一次、第二次産業の推計
prime_sec = 0   # 第一次、第二次産業
# 第一次、第二次産業の表を作成
df_h12_prime_sec = df_h12_onedigit.loc[df_h12_onedigit["classification"] == "第一次、第二次産業"]
for icode in df_h12_per_cap_mt.index:
    for pscode in df_h12_prime_sec.index:
        prime_sec += df_h12_per_cap_mt.loc[icode][pscode]

推計結果は、24.96t/人となり、先行研究の値24.9t/人に近くなりました。

総投入量、総生産量、廃棄物等の推計

以下の算出式から推計を行いました。

$$
総投入量 = 移輸入(資源) + 移輸入(製品) + 第一次、第二次産業 + 県内生産(資源)

総生産量 = 第一次、第二次産業 + 県内生産(資源) + 移輸出(資源) + 移輸出(製品) + 一般消費 + 第三次産業 + 在庫 + 固定資本

廃棄物 = 総投入量 - 総生産量

廃棄物等 = 廃棄物 + 燃料投入
$$

推計結果は、以下のようになります。

  • 総投入量 : 49.26t/人
  • 総生産量 : 45.35t/人
  • 廃棄物等 : 3.90t/人

先行研究の値は、以下のようになります。

総投入量 : 49.8t/人
総生産量 : 45.9t/人
廃棄物等 : 3.90t/人

総投入量と総生産量は先行研究と近い値が、廃棄物等は等しい値が得られました。

追試結果の評価

県内生産(資源)が先行研究に対して、0.6倍と最も値がかけ離れています。値がかけ離れてしまった原因について検討する必要性がありますが、県内生産(資源)以外の項目については、概ね同等の値を示しました。
これは、追試の妥当性を証明する結果と言えると判断しました。

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#194 2000年神奈川県マテリアルフロー推計を追試” に対して1件のコメントがあります。

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