#266 2000年山梨県における着産業業種別総着量の追試
前回の投稿において、持続可能な地域マテリアルフロー分析を目指すことを表明しました。その一環として、これまでこだわってきた重量単価設定による産業連関表による手法から、島崎(2008)が行った物流センサスによる手法に舵を切ることにしました。
島崎(2008)の手法によるマテリアルフロー推計については、投稿258などにおいて、少し取り組んでいました。その時は、2000年物流センサスのデータがWeb上で掲載されていなかったため、追試を諦めておりました。
残念なことに、全国貨物純流動調査(物流センサス)集計表ダウンロードのページには、2000年物流センサスの調査結果の集計表が掲載されていないため、ダウンロードができせん。
投稿#258より引用
その後、担当省庁の窓口にメールで問い合わせて、2000年山梨県マテリアルフロー推計に必要な物流センサスのデータを提供していただきました。提供して頂いたデータを元に、島崎(2008)の追試を本投稿から行っていきます。
物流センサスとは
島崎(2008)が利用した物流センサスとは、国土交通省が実施する「全国貨物純流動量調査」の通称になります。物流センサスは、貨物そのものの流動を把握するため、荷主側から貨物の動きを捉えた統計調査です。荷主が属する産業、輸送された貨物の品目、重量、届先地、輸送機関、輸送距離、輸送経路、物流時間などに加えて、貨物の受取主が属する産業までわかるようになっています。
なお、物流センサスでは対象事業所に対して、「年間輸送傾向調査(年間調査)」と「3日間流動調査(3日間調査)」の2種類の調査を実施しています。年間調査では、年間の出入荷量および輸送傾向を把握するため、品類別出入荷量、出荷先地域別重量割合などを明らかにしています。
一方、3日間調査では、貨物流動をより詳細に把握するため、3日間(2000年の場合、10月17日から19日)の出荷1件ごとに品目、荷受入業種、出荷重量などを明らかにしています。
以下に物流センサスの用語の意味、図266−1に用語の関係を示します。
発量:県内から県外へ出荷された貨物重量
着量:県外から県内へ入荷された貨物重量
内部流動量:県内で出入荷された貨物重量
総発量:発量と内部流動量の合計
総着量:着量と内部流動量の合計
発産業:貨物の送付先が属する4種の産業
着産業:貨物の受取先が属する10種の産業
品類:すべての貨物を8種に分類したもの
品目:品類をさらに79種に細分類したもの
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図266-1 物流センサスの用語の関係(島崎(2008)より引用)
物流センサスによる山梨県マテリアルフローの推計手順
推計手順の概要を図266−2のフローチャートと併せて以下に示します。
1) 「都道府県間年間流動量調査」のデータから、年間の品類別の発着量、内部流動を求めます。
2) 「都道府県間流動量3日間調査」のデータから、3日間の品類・品目別の発着量、内部流動量を求めます。
3) 1)の結果に2)で求めた3日間の品類と品目の比率を配分し、年間の品類・品目別の発着量、内部流動量を算出します。
4) 3)の結果に「発産業業種・品類品目別流動量3日間調査」と「着産業業業種・品類品目別流動量3日間調査」の2つのデータから業種別比率を求め、各産業に配分します。
5) 4)で配分する際、これらのデータは全国平均値を意味するため、山梨県の産業構造や取引状況が考慮されません。そのため、工業統計表を用いて、着産業は製造品出荷額、発産業は原材料使用額を参照し、重みづけによる補正を施します。
6) 業種別、品類・品目別の年間流動量を求めた後、産業廃棄物排出量、一般廃棄物排出量、県内総生産、エネルギー消費量、二酸化炭素排出量など、他のデータを追加します。
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図266-2 物流センサスによるマテリアルフローの推計手順(島崎(2008)より引用)
2000年山梨県における着産業業種別総着量の追試
目下、推計手順5)における着産業業種別総着量の推計まで終えたところです。得られた推計結果と島崎(2008)と比較したものが、表266-1になります。
表266−1 追試での推計結果と島崎(2008)との比較(2000年)
運輸・通信業で1.79倍、製造業で−0.27倍というように、値がかけ離れている産業が見受けられます。実はこの値がかけ離れているのが気になって、何とか値を近づけたい、追試の精度を上げたいともがいていたのがこの2ヶ月でした。
けれども、それでは先に進めないとようやく気が付き、ひとまず先に進むことにします。もしかしたら、先に進む過程で気づくことがあることに期待して…。
というわけで、次回は発産業業種別総発量の推計に取り掛かることにします。
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