#274 2015年大阪府のマテリアルフローの推計
今回の投稿では、2015年大阪府のマテリアルフローを物流センサスと港湾統計から推計してみました。
用語の定義について
マテリアルフローに関する用語の定義を確認します。まず、基本用語として、
- 発量:府内から府外へ出荷された貨物重量
- 着量:府外から府内へ入荷された貨物重量
- 内部流動量:府内で入出荷された貨物重量
が挙げられます。
また、府の境や国境を越える流動と、府域または国内での流動とを区別するために以下のような用語を用いることにします。
国内での流動で、府の境を越える流動を純移出(=発量−内部流動量)と純移入(着量−内部流動量)で表します。
海外との流動については、輸出(府から輸出された貨物流動)と輸入(府へ輸入された貨物流動)で表し、国内外を問わず、府を越える流動として、純流出(=純移出+輸出)と純流入(=純流入+輸入)という用語を用いることにします。
さらに、総流入(純流入に内部流動を加えたもの)と総流出(純流出に内部流動を加えたもの)という用語も挙げておきます。
航路による輸出入のデータについて
以前取り組んだ、山梨県におけるマテリアルフローの推計では、山梨県には航路や空路は存在しないため、輸出量や輸入量は考慮に入れませんでした。一方、大阪府には航路や空路が存在します。
そのうち、航路については、港湾統計のデータを参照しました。以下に詳細を記述します。
航路における輸出入によるフローとして利用するデータについては、2015年度物流センサス「年間調査」の調査期間である2014年4月から2015年3月に対応させるため、「港湾統計(年報)2014」および「港湾統計(年報)2015」から「第3表 海上出入貨物表 (2)品種別都道府県別表(輸移出入) 」を輸出入のデータとして用いました。
この表からは、都道府県別・9品類83品目(うち1品類1品目は、「分類不能のもの」)の輸出入が得られています。最終的には、物流センサスでの調査品目と港湾統計での調査品目を統合して、9品類67品目(表274−1)としてマテリアルフロー推計を集約しました。
表274−1 マテリアルフロー推計の基本となる9品類67品目の内訳
空路による輸出入のデータについて
空路については、大阪府には関西国際空港が存在します。2016年度国際航空貨物動態調査の「図表3-2-10 利用空港と品目」によると、2016年度関西国際空港における輸出量が約720t、輸入量が約621tであり、どちらも千tに満たないこと、国際航空貨物動態調査の調査品目を物流センサスおよび港湾統計の調査品目と集約するのが煩雑という2つの理由から、今回のマテリアルフロー推計では、空路による輸出入については考慮に入れないことにしました。
推計手順
2015年大阪府のマテリアルフローの作成にあたり、島崎(2008)、天野ら(2001)の手法を参照しました。以下に推計手順の概要を示します。
- 「都道府県間年間流動量調査」のデータから、年間の品類別の純移出量、純移入量、内部流動量を求めます。
- 「都道府県間流動量3日間調査」のデータから、3日間の品類・品目別の純移出量、純移入量、内部流動量を求めます。
- 上記1.の結果に、2.で求めた3日間の品類と品目の比率を配分し、年間の品類・品目別の純移出量、純移入量、内部流動量を算出します。
- 上記3.の結果を、表274−1で示した9品類67品目に集約します。
- 「港湾統計(年報)2014」および「港湾統計(年報)2015」の「第3表 海上出入貨物表 (2)品種別都道府県別表(輸移出入) 」のデータから、2014年度(2014年4月〜2015年3月)の輸出入量を求めます。
- 上記5.の結果を、表274−1で示した9品類67品目に集約します。
- 上記4.と6.の結果を合計して、純流入量・純流出および総流入量・総流出量を算出します。
- 上記7.の結果に「発産業業種別・品類品目別流動量3日間調査」と「着産業業種・品類品目別流動量3日間調査」の2つのデータから業種別比率を求め、各産業に配分します。
- 上記8.で配分する際、これらのデータは全国平均を意味するため、大阪府の産業構造や取引状況が考慮されていません。そのため、平成28年経済センサスを用いて、着産業は製造品出荷額、発産業は原材料・燃料・電気使用額を参照し、重みづけによる補正を施します。
- 業種別、品類・品目別の年間流動量を求めた後、産業廃棄物排出量、一般廃棄物排出量、県内総生産、エネルギー消費量、二酸化炭素排出量など、他の統計データを追加します。
2015年大阪府のマテリアルフローの推計結果
図274-1に、2015年大阪府のマテリアルフローの推計結果を示します。

図274−1 2015年大阪府のマテリアルフロー