持続可能な地域マテリアルフロー分析を目指して

久々の更新になります。

本ブログでは、地域レベルでのマテリアルフロー分析をテーマにしています。

地域レベルでのマテリアルフロー分析を行う意義として、田畑と井村(2006)は以下のように言及しています。

循環型社会形成に向けた政策は国レベルで決定されているが、実現に向けた具体的な施
策が展開されるのは地域レベルである。このような施策の作成を資源循環構造や地域特性
を反映可能な形で支援する手段として、マテリアルフロー分析がある。

田畑と井村(2006)より引用

地方自治体には、施策の効果を定量的に検証し、循環型社会の形成度合いを把握するとともに、次の施策作成に活かす視点が欠かせません。

そのためには、地域レベルでのマテリアルフロー分析を継続して行うことが重要だと私は思うのです。

私が知る限りでは、地域レベルでのマテリアルフロー分析についての研究は、1990年代から2010年代にかけて盛んに行われました。

それらの多くがマテリアルフローを推計する手法の開発と開発した手法を用いたケーススタディという内容の研究でした。

私が残念に感じるのは、上記の研究で開発された手法を用いた地域マテリアルフロー分析が継続的に行われていないことです。

その原因として、開発された手法が専門家の試行錯誤に基づくあまり再現性に課題を残していることや、手法の詳細な情報が紙幅の都合で掲載されていないことが挙げられます。

また、研究者にとっても、既存の手法によるマテリアルフロー分析では研究のオリジナリィが乏しくなるために、新手法の開発に傾注せざるを得ない事情があることも推察されます。

加えて、地方自治体にとっても、施策の定量的な評価を行う自体の必要性は認識しているものの、マテリアルフロー分析の知識を有した担当者の不在や評価実施に伴う負担増加などのハードルがあることが想像できます。

以上のことを踏まえ、私の最近の関心は、継続した地域マテリアルフロー分析を行う、つまり、持続可能な地域マテリアルフロー分析を構築することです。

持続可能な地域マテリアルフロー分析を構築するためには、以下のような点が重要ではないかと考えています。

  1. 専門家の試行錯誤を極力排除し、再現性を高めること
  2. 既存の手法をアレンジした簡便な手法を開発・提案すること
  3. 手法の詳細を記録し、公開すること

上記2.を重視すると、手法は簡便になる一方で、マテリアルフロー推計の精度が下がることが危惧されます。

ですが、ある程度の精度低下はやむを得ないものと許容した上で、簡便な手法を提案し、持続可能な地域マテリアルフロー分析を追求していきたいと考えています。

引用文献

田畑 智博, 井村 秀文, 循環型地域社会形成支援のためのマテリアルバランス表の開発とその適用に関する研究, 環境科学会誌, 2006, 19 巻, 4 号, p. 329-343

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