#257 産業連関表とはしばしのお別れ
これまで、産業連関表を用いた地域マテリアルフロー分析を行ってきました。特にここ最近は、橘ら(2012)の手法を元に、初期重量単価の推計を試みてきました。
橘ら(2012)を援用する際に感じた困難さ
例えば、橘ら(2012)では、初期重量単価を推計する際に、
Web 上の公開情報や製品カタログなどを参考にいくつかの製品重量を調べ,その平均値を
取ることにより重量を設定した
と記述しています。
私も機械製造業の初期重量単価を推計する際に、Web上の公開情報や製品カタログを参考にしようとしました。
けれども、製品が膨大に存在し、どの製品重量を採用したらよいかを決定することに困難さを感じました。
また、重量単価の最適化計算において、変化率下限および上限を設定する必要があります。その際、橘ら(2012)では、
変化率下限および変化率上限は,品目ごとに設定される閾値である。本研究においては,初期重量単価の信頼性や妥当性を考慮し,0 から± 0.7 程度の数値を設定した。
としていますが、初期重量単価の信頼性や妥当性をどのように変化率の設定に活かすのかについては述べておらず、変化率を設定することに対しても困難さを感じました。
このように、橘ら(2012)の手法を援用する際に感じた困難さは、再現性に関するものでした。
既存統計を活用することで再現性を担保した地域マテリアルフロー分析を行いたい!
ここで、改めて自分がどうして在野研究を行っているのかをついて考えてみました。
私は、既存統計を活用することで再現性を担保した地域マテリアルフロー分析を行うことを目的に据えていたことに改めて気づきました。
誰もがアクセスできる既存統計を活用することで、再現性を担保する。
そうすることで、自分以外の誰かが、自分が分析した地域および時系列とは異なる地域および時系列でのマテリアルフロー分析を行えるようにする。
ひいては、各地域でのマテリアルフロー分析が広まり、事例が蓄積されていく。
そんな理想を私は持っています。
産業連関表とはしばしのお別れ
既存統計の一つとして、産業連関表が地域マテリアルフロー分析に活用できるわけですが、どうも産業連関表にこだわり過ぎていたかもしれません。
先行研究において、産業連関表以外の統計資料を用いた地域マテリアルフロー分析を行っている例があります。
例えば、天野ら(2001)は、物流センサス、港湾統計および工業統計を用いて、日本全国の都道府県におけるマテリアルフロー分析を行っています。
なので、産業連関表から少しの間、距離を置こうと思います。その間、他の既存統計の活用を試みることにします。
具体的には、天野ら(2001)の追試を行うことからリスタートしようかなと。
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