私の研究計画書 version 1
今回の投稿では、『情報生産者になる』(上野千鶴子著、ちくま新書)の第4章「研究計画書を書く」に基づいて研究計画書を書いてみました。
(1)研究テーマ
大阪府の製造業における2時点でのマテリアルフロー分析と環境効率評価指標の経年変化
(2)研究内容
循環型社会への進捗具合を確認する方法として、マテリアルフロー分析(MFA; Material Flow Analysis)がある。
これまでに、地域を対象としたMFAに関する研究は多く行われてきた。一方、地域産業を対象としたMFAに関する研究は少ない。
そこで本研究では、大阪府の製造業を対象とした2時点でのMFAを行い、環境効率評価指標の経年変化を明らかにする。
(3)理論仮説&作業仮説
理論仮説
2時点比較
宮川ら(2005)は、全国都道府県の製造業に関連するマテリアルフローを、インプット(入口)・スループット(循環)・アウトプット(出口)という3つの断面で分析し、各断面から見た環境効率を算定している。本研究では、地域を大阪府に固定し、2時点でのマテリアルフローを3つの断面で分析し、各断面から見た環境効率を算定、比較を行う。
日本標準産業分類の製造業中区分での評価
宮川ら(2005)では、製造業を4つに細分割しているが、本研究では、製造業を日本標準産業分類の製造業中区分に細分類することで、中区分での環境効率評価を行う。
作業仮説
2時点比較をすると、各種環境効率評価指標が改善されており、循環型社会への進捗具合は進んでいるのではないかという仮説を立てた。
(4)研究対象
産業廃棄物実態調査の調査対象年である2014年(平成26年)及び2019年(令和元年)の大阪府における製造業が研究対象となる。
(5)研究方法
推計した産業連関表と公表されている産業廃棄物実態調査報告書を用いて、2014年及び2019年の大阪府における製造業のMFAを行うとともに、環境効率評価指標を推計し、経年変化を明らかにする。
(6)先行研究および関連資料
- Tachibana J. Hirota K. Goto N. Fujie K. A method for regional-scale material flow and decoupling analysis: A demonstration case study of Aichi prefecture, Japan. Resource, Conservation and Recycling 2008:52:1382-1390
- 宮川征樹, 加用千裕, 曽和朋弘, 西村彰人, 天野耕二:全国都道府県の製造業における物質フローに基づいた包括的な環境効率評価, 環境システム研究論文発表会講演集, 2005年, 209-214
- 大阪府総務部統計課:平成25年(2013年)大阪府産業連関表(延長表)報告書, 2018
- 後藤忍:福島県における物質フローの推計, 福島大学地域創造第19巻第1号, 2007年, p.48-60
- 橘隆一・近藤浩正・荒川正幹・後藤尚弘・船津公人・藤江幸一:産業連関表を用いた重量単価の最適化モデルの開発と神奈川県のマテリアルフロー分析への応用, 環境科学会誌25(2), 2012年, pp.134-150
(7)研究用機材・研究費用
研究用機材
新規で購入するものは今のところなし。
研究費用
- 文献複写サービス利用料:5千円
- 書籍購入費:3万円
(8)研究日程
- 2022年11月〜2023年1月 先行研究の検討、2014年(平成26年)大阪府産業連関表推計、2014年大阪府製造業のMFA
- 2023年2月〜4月 2019年(令和元年)大阪府産業連関表推計、2019年大阪府製造業のMFA
- 2023年5月 2時点での環境効率評価指標の推計・経年比較
- 2023年6月 論文執筆開始
(9)本研究の意義
インプット面での環境効率の定量化が可能
大阪府循環型社会形成推進基本計画では、スループットとして循環利用率が、アウトプットとして最終処分量が記載されているが、本研究によって、インプットに関する環境効率を定量的に把握することができる。したがって、天然資源の消費がどのくらい抑制できたかを明らかにすることができる。
製造業中区分での政策評価や立案が可能
また、日本標準産業分類の製造業中区分ごとに環境効率指標の経年変化を定量化することで、製造業中区分単位での循環型社会に関する政策の評価や立案が可能となる。
(10)本研究の限界
産業連関表を基本としてMFAを行う上での課題
後藤(2007)は、物質投入量が多くカウントされる傾向と、流通の複雑なものの量が多く計算される傾向の2点を、産業連関表を基本とする場合の課題として指摘している。
本研究では、産業連関表を基本としているので、同様の課題があると考えられる。
産業廃棄物実態調査の間隔
本研究の基礎資料となる産業廃棄物実態調査は数年に一度の間隔で実施されている。それ故に、MFAの結果を循環型社会形成に関する政策決定の支援に用いるには、間隔が長すぎる点が課題である。
移輸入品の重量単価
橘(2012)は、重量単価の正確性は、産業連関表を用いたMFAの精度を決定づける重要な因子と指摘している。
本研究では、移輸入品の重量単価が移輸入元の重量単価を新たに設定せず、地域内のそれと等しいと仮定している。したがって、移輸入のMFの推計精度に課題がある。
書いてみての感想
research questionをたててこなかったので、研究テーマと研究内容を書く前に研究方法が先に埋まってしまった。